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しみぬきってどんなことをしているの?
しみぬきとは、通常のお洗濯やクリーニングの過程で落とせなかった汚れを「シミ」として、別処理を施して落とすことです。しみぬきの薬剤は100種類を超え、「洗剤」と呼ばれる界面活性剤などの他に、タンパク質や油などの有機物を分解する酵素や、黄ばみや色汚れなどの色素そのものを化学反応で分解する薬品など…一言に「しみぬき」と言いますが、まさに複雑な化学で出来ている高度で繊細な技術なのです。 さらに、洋服の場合、繊維素材も多種多様で性質も様々です。しみぬき師は「シミ」「繊維」「薬品」の主に3つの相性に加え、色・装飾・デザイン・柄・染め方・シミの場所…など様々な要因からケース・バイ・ケースで総合的に判断してしみぬきを施す、まさに衣類トラブルのスペシャリストなのです。
しみぬき師とは
ところで、しみぬき師とはどうやったらなれるのかご存知ですか?実はしみぬき師には特別な資格は必要ありません。つまり、誰でも名乗れば「しみぬき師」になれるのです。昔ながらのクリーニング店には、アイロンの達人がいたり、洗濯前の前処理を丁寧に行う職人さんがいて、しみぬきにも熟練した職人さんがいました。しかし、現在では多くのクリーニング店が人手不足・職人不足となり、「しみぬきに自信あり」と掲げるお店のしみぬき担当者が実は入社数か月のパートさんだったりします。 確かに、現代では技術や研究の発達で、より簡単にシミが落とせる薬剤や道具、システムが開発されています。しかし、入社数か月のパートさんは、難しい化学反応を理解しているでしょうか?シミは落とせても、生地を傷めないスキルは持っているでしょうか?やはり一番肝心なものは絶対的に専門知識と経験の量だと思うのです。 弊社には、クリーニング店には珍しく、国家検定「染色補正技能」一級の資格を持つこの道35年以上のベテランしみぬき師が2名在籍しており、この資格を持つ2人のみがしみぬきを施します。この技術の高さは全国でも屈指で、他店で断られたシミでお困りのお客様や、同業他社のクリーニング店様など、しみぬきの駆け込み寺としてもご利用いただいております。
国家検定「染色補正技能」とは
神社の補修に宮大工さんがいたり、絵画には絵画の修復師さんがいるように、着物にも着物の修復師がいます。それが染色補正技能士で、これは厚生労働省の検定によって技術の質が守られている伝統工芸のひとつです。 厳密にいうと、染め物を行う「染色」技能という大分類の中の「染色補正」技能という一番難しい部門です。 本来、染色補正師は和服や着物の補正を行う職なのですが、当社ではそれを洋服に応用させた伝統工芸由来のしみぬきを行っております。染色補正師が施すしみぬきの最大の特徴はシミを抜く技術は当然ながら、染め直すという技術が非常に高いところにあります。一言に染め直しというと、ペンキを塗り直すように「同じ色を上から塗ればいい」という簡単なイメージが浮かぶかと思いますが、染色補正は「足し算」で行われます。 例えば、色が褪せて黄ばんでしまったモスグリーンのコートがあるとします。モスグリーンは簡単に言うとくすんだ濃い緑です。わかりやすい色の構成で言うと、「緑(青+黄色)に何かの色を足してくすませて濃くした色」です。「黄ばんでしまった」というのは、おそらく「青と黄色に何かの色を足してくすませて濃くした色」から「黄色以外の色」が抜けて、残った「黄色」が濃く出てしまった状態なのです。染色補正師はこの抜けてしまった色を微妙な色の調合で元の色を復元させるという、非常に高度な技術を持っています。
しみぬきの上手・下手はどんなことで決まるのでしょうか。 それは、薬剤のレシピや繊維の知識はもちろんですが、突き詰めていくと実は、引き際・諦め時を知っているかどうかになると思います。 どんなに熟練したしみぬきの達人であっても、生地やシミの組み合わせなどにより、完全には落とせないシミはあります。例えば、ある頑固なシミに対して、唯一有効なしみぬき剤があるとして、そのしみぬき剤はそのシミに対してとても有効な反面、処理の仕方によっては繊維の地色を剥ぐ性質があるとします。その場合、しみぬき師はどうするのか…。 多くのしみぬき師は「落ちないシミ」として返品するか、シミは落とせても脱色の性質を知らずに失敗してしまいます。 一方、上手なしみぬき師は微妙な加熱や薬品の加減など、生地を傷めないギリギリを攻め、できるだけシミを落とします。薄くシミが残ってしまったとしても、絶対にそれ以上の無理はしません。お客様の「長く着たい」というご要望と、しみぬき師の「これ以上できない」という判断に落としどころを付けるのです。この判断ができるかどうかがしみぬき師の本当の素質だと考えます。